凍えた空気の感触もとうに忘れ
仰ぎ見る月すらもただの銀色
死に逝く体を繋ぎとめたはずの心は
いつの間にか腐りゆく体よりも先に崩れ落ち
後にはただ 欠片が空しく残るのみ
手を伸ばしても その指に触れられるものはとうに無く
その目に映るものは 意味を成さず
声をあげても 首に刻まれた傷口から耳障りな音が漏れるだけ
目の前に佇む小さな黒い影
ふいに瑠璃色の髪がさらりとゆれ 銀の瞳がこちらを捉えた
虚ろに見上げる視線に 凍った銀色がわずかに揺らぐ
その揺らぎは歓喜だろうか 憤怒だろうか 憎悪だろうか 悲哀だろうか
けれどそれを感じ取る心はもはや失われ
かつての在り処で かすかに欠片が疼いた
−これが正しいとか、救いになるとは思っていません。
感情を押し殺したような冷たい声
−けれど、僕は他に方法を持たない。
瞳が閉じられ 銀色が闇に沈む
−だから、
そうして再び開かれた瞳は 二度と揺らぐ事のない強い光を宿して
−呪うなら、呪えばいい。
迷いの無い動作で右手が引かれ
月に輝く十字架が夜をなぞり
耳元で風を切る音に
何かがぶつりと途切れ
世界が、回転、した、
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